金属バットのお漫

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 M1の敗者復活で初めて金属バットを見た人が多いことだろう。そして多くの人が虜になったことだろうと思う。漫画から出てきたみたいな関西弁を使い一度見たら忘れられないシルエットで口を開けば面白いことしか言えないあの二人に魅力を感じられない人はいないことだろう。

 金属バットの魅力は二人の立ち話であるということだ。ただ面白い男が二人がいる。それだけで漫才は完成するということが分かってしまった。面白い男というのは世界で一番かっこいいのである。

 

金属バットのネタは全部好きだが今回は敗者復活のネタについて話したい。

 

小林 ども 金属バットです  

友保 うぃ よいしょ うん よいしょ うぃー ねぇ さむっ

小林 あの さぁ

 こうして漫才が始まる。書いてて思ったけどやばい。ノイズだらけ。もう面白いことが始まるとしか思わない。漫才の展開はお見合いに行ったという話。テーマは普通であるが始まってすぐワードセンスが光る。カービィみたいな女をピンク饅頭と肯定。普通だったらツッコミだっていいはず。ピンク饅頭がマカロンとライス大を食べ合わせると聞いたらやっと「ベロ死んでんのか」とツッコむ。なんて余裕がおありなこと。相手の話をちゃんと聞く。仲いいことが伺えるしほんとはいい人たちと安心するからお客様*1もちゃんとついてこれる。

 

小林 休みの日になったら一人で森行って楽器演奏してる

友保 ラリってんのか お前おい

小林 ずーっとホイッスル吹いてる

友保 バグってるやんけ おい 

   ラリってると思ったらバグってんのかお前は

ラリってるなんて言葉テレビから初めて聞いたよ。最高でしょ。ラリってるが最高に面白いのにバグってるんだからね。友保のおいとかなんやとかで本当に二人の立ち話を聞いている気分になるしとてもいいリズムにもなっている。そしてこの後みんな大好き友保の真顔「は?」タイム。ここでやっぱりやばいやつであること思い出させてくれる。お客様とも距離ができ、緊張感を生み出す。現実に引き戻してくれる言葉は「ベロ噛んで死ね」である。そんなのこと言われたら一生ついていくしかないでしょ。

 

 

小林 ちょっとね 僕ね 酒癖が悪くて

友保 芸人やってるからようけ飲んじゃうのよ 堪忍な

小林 よっぱらったらね 女殴っちゃうんですよ

友保 カスやんけおまえおい!

   女殴んのと畳に水こぼすのは絶対やったらあかんねんぞ

金属バットぐらい面白いと怖いものは何もないのである。「ちょうど肩ぐらいの場所に顔があるから殴りやすい」という理由は面白すぎる。だって誰もそんなこと思ったことないからね だから笑えるし畳に水こぼすのはあるあるであるから笑えるのだ。お笑いは難しい。幻覚の中の有幻覚的,有幻覚の中の話しのように*2。女は叩かれれば叩かれるほど強くなるんですは少し引かれてたけど。。。ここも鉄の話してんちゃうねんでちゃんと打ち消された。金属バットの工業高校ボケは好きすぎる。

 

小林 派遣の仕事してはる

友保 オフィスとかいってはんのや

小林 戦争とか紛争に派遣されてるやって

友保 傭兵ちゃうん ほな おい

   傭兵を派遣の仕事いわんねん

小林 つまようじ一本で戦車パクれるんやって

友保 化けもんやないかい おまえ おい レジェンド傭兵やんけ

   そりゃ自分のこと鉄いうしガン折るやな

繋がった!こんなこともできるんですよ金属バットは。 レジェンド妖怪みたいに言うし、パクれるとか普通の人は言わんのよ。友保は丁寧にガン折るジェスチャーするし「なにがいなぁ」とつまようじのボケを振るときには正面向いて見せ場だと教えてくれるし金属バットは最高なのである。

 

小林 ズバリこう言われまして

友保 なんがい

小林 あなたとの結婚は結婚だけにけっこんです   いうて

友保 よいしょー うぃ

小林 こけこっこ

友保 おらおら あざしたぁ

 金属バットの終わり方は芸術である。たった3分でお客様に色々な感情を抱かせるが結局最後はおかしな奴らで終わらせる。爆笑をとった二人なのに指名手配犯と思わせるほどのはけ方である。面白すぎるベシャリをしたんだから終わらせ方は金属バットが決められる。面白い男はなんだってして良いのである。面白い男がしてることはなんでも面白くなんでも格好が良い。ただの立ち話には驚くオチなどない、そこには面白いがあるだけなのである。


ここまで読んでくれてありがとうがらし うぃオラあっしゃ‼︎

 

 

 

*1:プロレスラー内藤の真似

*2:大好きな漫画リボーンのクロームVSグロちゃんの時の骸のセリフより

斬新なバトル『忘レ物探偵』

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アイアンナイト、レッドスプライトの屋宜先生の新作読み切り「忘レ物探偵」

アイアンナイトが好きすぎる私は期待をしていたが期待に答えてくれたのはジャンプらしくないという点のみかもしれない。

私がなぜアイアンナイトが好きなのかというとジャンプにはふさわしくないダークファンタジーな世界観の中で主人公が市民のヒーローでもなく、精神的にもヒーローでない、そんなたまたま力を持っただけにすぎない男の子が正義のために力を振るうことを決めたそのストーリーが好きなのである。

 

忘レ物探偵の良いところはバトルの斬新さである。相手の目を見たら勝ちな探偵は鏡やガラス玉を使って相手と目を合わせる。アイアンナイトでは弱いダーク主人公、レッドスプライトでは能力者全員電気系と毎回斬新さはある。それが読者にハマらないのが屋宜先生なのである。

 

忘レ物探偵は目で見た者の記憶を消す能力を持っててその能力は常に働いてしまうのである。強い能力であるがもう少し幅が欲しいと思ってしまうよなぁ、この能力であるならガンガンバトルでなく人情的な話が向いてるのではと思ってしまう。忘れ物探偵での敵は警察であったという屋宜先生大好きパターン。こういうところが好きなんだけど邪道な王道過ぎて飽きられちゃうとも思う。

 

屋宜先生の魅力はポップな絵柄と希望が絶望に変わる演出と少しのワードセンスである。以上から導き出される答えはダークファンタジーを描くことだろう! 屋宜先生お願いします!!

 

好きなものを好きといえるようになったのはいつからだろう

 

「月・水・金はスイミング」という大好きな作品について話したい。

福島鉄平先生によるジャンプに掲載された43Pの読み切り作品である。

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どこが好きかというとまず二人の距離感である

女の子は有川マドカさん 男の子は千葉オサム君

同じクラスの中学三年生 通ってるスイミングクラブも一緒

でもそれだけ 

 このナレーションで心をつかまれた同志は必ずいる。読んだ人は知っているがこの二人の関係性は本当に「それだけ」なのである。でも「それだけ」でも気になってしまうのが中学生なのだ。

 この作品の好きなところである主人公オサム君の気になり方の演出がさすが「サムライうさぎ」の福島先生だ。オサム君はマドカさんの会話をこっそりと聞き、こっそりと胸の内で返答して考えが同じで喜んでしまうのである。これは恋心なのか、、、答えはNOだ。ただ同じスイミングに通っている女の子のことを特別に感じているだけである。

 オサム君はマドカさんがスイミングをやめることと知ると「とてもつまらない」思った。中学で会えるし、高校も同じなのに。。。 オサム君にとってスイミングは自分だけがしている特別なことであり、いってしまえばマドカさんとの二人だけの秘密なのである。この言葉はとても高い攻撃力を持っていることはスカウターを使うまでもない。

マドカさんには会えないと思っていた次のスイミングの日に予想外のエンカウントをする。その時にオサム君は「ひとりじゃつまらない」と口に出してしまう。ここでオサム君は自分が口にした言葉のおかしさに気づく。(別に一人ではない。っていうかもともとマドカさんとはなんのつながりもない)しかし同じ中学というつながりは町のスイミングスクールでは意味を持つのである。それと同様男の子が女の子に興味を持つ理由としては結構なものである。

 

最後 作品の締めにはこうある

 この子はオサム君 この子はマドカさん 

同じクラスの中学三年生 通っていたスイミングクラブも一緒

でも それだけ

一緒に遊ぶこともなく会話を交わしたこともほとんどありません

けれども けっして遠くはない

そしてそれは きっとこのさきもーー

 けっして遠くないのよ! だって同じ中学出身で同じスイミングクラブいってるんだもん!!そりゃ遠くないよ!! 

 

中学生ってさ一番男女の関係が難しい。男の子が女の子が好きなんて絶対言えないし純愛も鼻で笑わなきゃいけないのである。でもそのルールが適用されるのは学校でありスイミングに通っているオサム君には適用されないのだ。もう学校という世界を俯瞰で見ることのできる大人の読者がオサム君のことを大好きになってしまう理由であると思った。

 

大人になると自分の好みもある程度分かってきてある物や人を見たときに全貌を理解しなくても自分の好みであるか好みでないかは判断できる。しかし中学生であるオサム君にはまだ自分がどういうもの好きで、どういう人が好きなのはわからない。若い世代にとって出会いには打算のようなものがない。大人になってしまった多くの人は忘れてしまっているのかもしれないが自分が胸を張って何かを『好き』といえるようになるまで時間がかかったと思う。なぜなら「これが好き」といったら多くの人は「なんで好きなの?」と返されそこでは「なんとなく?」といった回答は期待されていなくしっかりとした言語による説明が求められ、答えを見つけるまで時間がかかったことだろう。

「月水金はスイミング」ではなにかを好きになったきっかけやなにかを好きになった過程といった事象の心の動きを繊細に慎重に切り取っていて、そこが多くの人に当てはまるのである。これが多くの人がこの作品に心を打たれた理由である